浦和地方裁判所熊谷支部 事件番号不詳 判決
主文
被告人大野吉岡、同古山毅、同萱津富男をいずれも懲役一年六月に処する。同関根長吉を懲役一年に処する。
訴訟費用中証人野口とみ、同伊藤宗太郎、同杉山重隆、同高橋摠助、同小野津仙吉、同児島菊太郎に支給した部分は被告人等四名の連帯負担とし弁護人野村常次郎に支給した部分は被告人関根長吉の負担とする。
理由
罪となるべき事実
被告人関根長吉は、東京都練馬区旭町グランドハイツ内アーランドユーの大工、被告人大野進事大野吉岡は同僚の大工職長、被告人古山毅は同所営繕部厚生係、被告人萱津富男は同所営繕部厚生課長であるが昭和二十四年九月六日被告人関根長吉の同僚大下清が勤務先アーランドユーからの帰途誤つて電車から転落死亡した事を奇貨とし同人の死亡を公傷死と仮装し公傷死による遺族補償金及び葬祭料の請求をなして金員を騙取しようと共謀し被告人大野吉岡は同年十月上旬頃「大下清がキテイ颱風後の緊急工事に従事中職長の命に依り道具を取りに自宅に帰る途中電車から転落死亡したという趣旨の虚偽の証明書を認め被告人萱津富男はその頃右証明書を利用して米軍ジヨンソン大尉から右大下清の死亡を公傷死と認める旨の証明書一通(昭和二十五年押第五八号の五はその写)の交付を受け被告人古山毅はかねて被告人関根長吉、同大野吉岡らと共に準備しておいた右大下清の実母野口とみ名義の遺族補償金及び葬祭料請求に要する書類に添付して同年十月十八日頃東京都渉外部新宿渉外労務管理事務所に提出し東京都渉外部管理課の係員を右大下清の死亡が前記のような事由による死亡であつて公傷死であると誤信させ野口とみに対し大下清の公傷死による遺族補償金として四十万四千三百円、葬祭料金として二万四千二百五十八円を支給する旨の裁定を受けその結果被告人関根長吉は同年十二月六日前記新宿渉外労務管理事務所で情を知らない同管理事務所出納課長中津正考を介して同管理事務所から野口とみに対する大下清の公傷死による遺族補償金並に葬祭料名義で金額四十二万八千五百五十八円の小切手一通の交付を受けて之を騙取したものである。
証拠の標目(省略)
適条
被告人等の判示の所為は刑法第二百四十六条第一項第六十条に該当するから所定の刑期範囲内で被告人大野吉岡、同古山毅、同萱津富男を各懲役一年六月に同関根長吉を懲役一年に処する。訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一条第一項第百八十二条を適用してそれぞれ主文掲記の通り被告人等の負担とする。(昭和二五年一二月一日浦和地方裁判所熊谷支部)